略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
20時半。

まもなくお開きという頃、宮本さんが現れた。

「結、お疲れ様。」

そう言って、宮本さんは、指輪を差し出した。

「結、俺と結婚してください。」

結、受け取るな。

だけど、俺の思いは届かず、結は泣きながら、

「はい。」

と受け取っていた。


周りは、

「ひゅー!!
やるぅ〜!!」

「おめでとう!!」

口々に冷やかしとお祝いの言葉を掛けていたが、俺の目には、結が嬉し涙を流している訳ではない事は明らかだった。

なんで、そんな辛い思いをしてまで、その指輪を受け取るんだ?

俺が今、その指輪を取り上げて、突き返してやれたら、どんなにスッとするか。


俺のそんな思いを他所に、宮本さんは、
「ありがとう!」
と微笑んで、手を挙げていた。

そして、結の左手にその指輪をはめた。


………大丈夫。

結は、きっと近い将来、その指輪をはずすはず。

結の幸せは、そこにはないんだから。
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