略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
「はぁ!?
っていうか、いつまで人の手、掴んでるのよ。」

「離したら、お前、逃げるだろ?」

「ここまで来たら、もう逃げないわよ。」

伊藤がそう言うから、俺はその手を離した。


席に着くと、俺はオムライス、伊藤はシーフードグラタンを頼んだ。

「なぁ、お前、なんでここにいるわけ?」

せっかちな俺は、前置きもなく本題に入った。

「は? あんたが連れてきたんでしょ!?」

「そうじゃなくて、なんで大阪行かなかった
んだ?」

「関係ないでしょ?」

「関係ないけど、気になるじゃん。
別れたの?」

「は? 縁起でもない事、言わないでよ。」

「だって、普通、連れてくだろ?
何年も付き合ってて、年も30と28だろ?
俺なら、転勤の内示が出た瞬間にプロポーズ
するけどな。」

彼女を置いて転勤するなんて、俺には考えられない。


「新しい場所で、新しい役職で、知らない人に
囲まれて仕事するんだよ。
私がいたら、迷惑じゃん。」

「は!?
好きな女がいて迷惑なんて事、あるわけない
じゃん。
ほんとにそんな事言われたのか?」

あり得ねぇ。
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