略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
結が俺の手を引いて歩く。

左に曲がって、信号を渡って…
これ、俺ん家とめっちゃ近くない!?

そんな事を思っていると、目の前にうちのマンションが。

え!?
入るのか?

結はすたすたとエントランスを抜ける。

「は!? マジで!?」

驚く俺を無視して、結はエレベーターの奥の階段を登る。

202号室の前に着くと、

「送ってくれてありがとう。」

とにっこり笑って言った。

俺は、しばらく呆然としていたが、

「くくくっ
やっぱ、お前、すげー。」

と笑った。

「そう?
天も気をつけて帰ってね。」

と、結はさらりと言う。

「くくっ
ああ、そうだな。」

『気をつけて』って…
俺ん家、このすぐ上だぞ?

「なぁ、『お茶でもどうぞ』みたいなのは、
ないの?」

「ない。」

結は取り付く島もなく言う。

「なんで?」

いいじゃん!
ちょっとぐらい上げてくれたって。
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