略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
5分程で、伊藤は戻ってきた。

財布をしまおうと引き出しを開けて、千円札に気付くと、

「あなたに奢られたくないんですけど。」

と言って、千円札を俺の机に返してきた。

だから、俺は、

「俺、デート代、割り勘とか嫌なの。
男のプライド?
くだらないけど、立ててやってくんない?」

と言って、千円札を伊藤の机に滑らせた。

「は!?
あれのどこがデートなのよ!!
ふざけないでよ。」

お前に彼氏さえいなけりゃ、俺たちの初デートだよ。

「お洒落なカフェで仲良くオムライスと
グラタンを食べる。
相手が宮本さんだったら、デートだろうが。
デートかそうじゃないかは、あくまでも本人の
主観でしかない。
デートかどうかは、俺が決める。
お前の主観はいらない。」

宮本さんとは、伊藤の彼氏の宮本海翔。

社内では、宮本さんが王子で俺がナイトだと言われている。

はた迷惑な例えだ。

伊藤は納得していないようだったが、諦めて千円札を財布に入れた。
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