略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
その後は、お互いに話し掛ける事なく、無言のまま仕事をした。


だけど…


この状況に耐えられなくなった俺は、19時に

「なぁ。」

と声を掛けた。

「何?」

伊藤の不機嫌な声が返ってくる。

「腹、減らね?」

「………空いたけど、何?」

「今日は、俺も異動初日だし、早めに上がって
飯行かねぇ?」

「………あんた、昼にあんな事あって、よく
私を誘えるわね!?」

伊藤の視線が冷たい。

「あんな事、あったからさぁ、お詫びって
いうか、仲直り?みたいな。」

「………」

「これから、2人で一緒に仕事してくんだし、
こんな氷みたいな空気で毎日働きたくない
だろ?
伊藤が好きな店でいいから、行こ?」

俺は、出来るだけ穏やかな声で言ってみる。

「もちろん、奢りよね?」

伊藤が微かに笑った。
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