略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
「伊藤、よろしくな。」

俺は新人の頃の事を反省して、出来うる限りの笑顔で挨拶をするが、

「…よろしく。」

と不貞腐れた挨拶を返されてしまった。

6年経っても、当時のわだかまりは消えないらしい。

正直な俺は、つい、

「お前、もうちょっと愛想のいい挨拶、
できねぇの?」

と余計な事を言ってしまった。

「あんたに愛想を振りまく理由がない。」

前途多難な反応。
俺は仲良くしたいのに。

「俺、一応、お前の上司なんだけど?」

権力を行使してみる。

「ハイハイ、申し訳ございませんでした。
小川主任。」

………逆効果だった。

「やっぱ、お前に主任って呼ばれるのは
気持ち悪いから、いい。
敬語もいらない。」

本来の伊藤と普通に仕事ができれば、きっと快適な職場環境が得られるはずなのに。

6年前の自分を悔やんでも悔やみきれない。
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