Adagio
女性たちはすぐに顔を前に向けて歩き始めたが、有紗の頭の中には聴こえもしないはずの、悪い囁きがぐるぐると回っていた。

 脚が太いのにスカートを履いているのがみっともなく見えるのだろうか。それとも、太っているのに洋菓子店の袋をふたつも持って、食いしん坊のように見えたのだろうか。

(こんなのいつものことだ。大丈夫、気にしない)
有紗はぎゅっと唇を横に結んだ。
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