Adagio
宇美もこの小さな家の中に何が入っているのか興味があるらしい。有紗は蓋になっている屋根の部分を開いた。箱の中には、数種類のサブレと一緒にショップカードが入っている。
どうやら本店は鎌倉にあるジャム専門店らしいが、支店ではサブレを中心に扱っているらしい。あとで調べてみよう。有紗はショップカードをペンスタンドに立てかけるようにして置いた。
「一つちょうだいよ」
返事を聞く前から、宇美が一枚取った。パッケージフィルムをビリビリ破いて、サブレに歯を立てる。
「今はこういうちょっと女の子みたいな気配りが出来る男っていうのがモテるのねえ。私の時代なんかは新井くんみたいな、男臭いのがモテたけど」
新井くん、というのは取締役総務部長のことである。部下たちからの人望が厚く、本社内でも強い発言力を持つ人物だ。
年が近く、なにかと部どうしの関わりもある分、二人はちょっと仲がいい。新井を「くん」付けで呼ぶのも宇美くらいのものである。
どうやら本店は鎌倉にあるジャム専門店らしいが、支店ではサブレを中心に扱っているらしい。あとで調べてみよう。有紗はショップカードをペンスタンドに立てかけるようにして置いた。
「一つちょうだいよ」
返事を聞く前から、宇美が一枚取った。パッケージフィルムをビリビリ破いて、サブレに歯を立てる。
「今はこういうちょっと女の子みたいな気配りが出来る男っていうのがモテるのねえ。私の時代なんかは新井くんみたいな、男臭いのがモテたけど」
新井くん、というのは取締役総務部長のことである。部下たちからの人望が厚く、本社内でも強い発言力を持つ人物だ。
年が近く、なにかと部どうしの関わりもある分、二人はちょっと仲がいい。新井を「くん」付けで呼ぶのも宇美くらいのものである。