かんしゃ の きもち

「……どうしちゃったの?」

 真っ暗な和室のど真ん中で、大の字になって寝転がるその人は、そのしっとりとした漆黒に違和感なく溶け込んでいた。

「……おかえり」

 俺の開けた戸から漏れる光の一筋に照らされた躰の陰影が、何だか妙に艶めかしくて、思わずこくりと喉を鳴らす。

 一歩踏み込もうとした、その途端。

「足元」

 ああ、この声の硬さと。

「踏まないで」

 閉じた空気。

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