かんしゃ の きもち

 今日は市内外の店舗回りに清州のリゾート候補地の下見まであって、車に乗りっぱなしだったから……。
 そうか。出先でも社内でも、やたらと見られてたのは、コイツのせいか。

 下からの刺さるような視線で我に返る。こくり、と今度は彼女の喉が小さく鳴った。

「ごめんね。こんなもの家に持ち込んで」

 そう言いながら眼鏡のテンプルに指をひっかけると、彼女が僅かに眉をひそめた。がっかりしたのが丸わかりで、正直、ものすごく面白く無い。

「これ、したままの方がいい?」

 こくんと、彼女が頷いた。

 やっぱり面白く無いから、彼女を抱きかかえたまま床に倒れこむ。周りで半紙が、カサコソと乾いた音をたてる。

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