極上御曹司の愛妻に永久指名されました
心の準備が出来てない。
「はい」
風間は笑顔で頷き、早く挨拶しろと言わんばかりに私の腕を自分の肘でつついた。
「は、初めまして。真野紫と申します」
つっかえながらもなんとか挨拶する。
婚約者と紹介されても、風間を怒る余裕もない。
今思うと、風間が服を用意してくれて正解だった。
安物スーツで元総理に会うなんて絶対に無理。
「紫さんか。綺麗な名前やし、べっぴんさんや」
鎌田元総理は人懐っこい笑顔で微笑んだ。
総理だった時は強面の印象だったけど、優しいおじいちゃんなのかもしれない。
「いえ、そんな……」
謙遜しながら作り笑いをする。
風間の話では、毎年社長が桜の時期に招待されていたのだけど、今年は体調のこともあって風間が代わりに出席することになったらしい。
「今日はお嬢さんが来たから、よう晴れとるわ。それに、桜も見事に咲いたなあ。まあ、座りや」
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