極上御曹司の愛妻に永久指名されました

「黒沢さん、紫が帰ってくるちょっと前までいたのよ。風間さんとお付き合いしているなら、そのこと黒沢さんにもちゃんと言いなさいよ。彼、今も紫と結婚するつもりでいるわよ」
母の言葉に固まった。
やっぱり今日も来たのか。
うちにいるのは危険だ。
「……紫、聞いてるの？」
母が私に煩く言ってきて、つい声を荒らげた。
「黒沢さん、黒沢さん……って、彼はお姉ちゃんの元カレであって、私とは何の関係もない！」
私の反論に母がポカンとした顔をする。
……いけない。少し強く言いすぎた。
「ごめん。とにかく、黒沢さんは私の元カレでも何でもないから」
今度は小声で言って、スーツケースを持ってカフェに戻ると、風間が気遣わしげに私を見た。
「大丈夫か？」
多分、私の声が彼にも聞こえていたのだろう。
近くにいる父も、少し気まずそうな顔をしている。
「……うん。大丈夫。ちょっと神経過敏になってただけ」