極上御曹司の愛妻に永久指名されました

夢でも見ているかのようで、その動きはスローモーションに見えた。
「大丈夫か、紫？」
恭一が吹っ飛んだ黒沢さんには目もくれず、私を抱き起こす。
「……うん、大丈夫」
この状況に驚きながら返事をした。
恭一を見てホッとするも、すぐに自分のしようとしたことを思い出して彼を直視できない。
私は……彼を裏切ろうとした。
罪の意識を感じている間に、黒沢さんが顔を歪めながらゆっくりと起き上がる。
「いてっ！」
頬を押さえて呻く黒沢さんが憎らしげに恭一を見据えて、立ち上がった。
「この若造ー！」
黒沢さんが悪態をつきながら恭一目掛けて猛烈な勢いでやって来る。
「恭一！」
咄嗟にその名を叫んで危険を知らせたその時、すぐ近くまで黒沢さんが迫っていた。
今度は恭一が殴られる!?
そう思ったけど、恭一の盟友の長谷川が長い足をスッと出して黒沢さんを邪魔する。
「うわっ！」