極上御曹司の愛妻に永久指名されました
『まあまあ、ふたりとも優しいからそんな緊張しなくても大丈夫だよ』
小春が何度もそうなだめると、紫は渋々俺と長谷川に挨拶した。
『……はじめまして。真野紫です』
彼女はほんの一瞬俺たちを見てすぐに視線をプイと逸らす。
なにか怒らせるようなことでもしただろうか?
そう思ったが、彼女とは俺が知る限り全く面識はない。
そもそも今まで俺の視界にいたこともなかった気がする。そんなことを考えながら、俺も挨拶を返した。
『小春の従兄の風間恭一です。法学部だから一般教養でしか顔を合わせないだろうけど』
『僕は小春ちゃんと風間の幼馴染の長谷川尊。風間と同じ法学部なんだ。よろしく』
俺も長谷川もにこやかに挨拶したが、その日紫と打ち解けて話すことはなかった。
どうやら初対面なのにかなり嫌われているらしい。
俺と長谷川を見て興味を示すどころか、紫は早く逃げたがっていた。
いつも小春の友達は俺と長谷川目当てで近づく子が多く、よく身辺調査をして小春が気付かないように遠ざけていたのだが、紫に関してはその必要がないようだ。
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