極上御曹司の愛妻に永久指名されました
『いいんじゃない?恭一ってさあ、勉強にしか興味なくて心配だったんだよね』
自分の思いを自覚してからは、紫を自分から積極的に誘わなくなった。
しつこく誘うのは、彼女には逆効果だと思ったから。
自分を嫌っている相手を振り向かせるには、まず自分を知ってもらうことが大切だ。
あくまでも小春の従兄として接して、少しずつ紫と会う機会を増やしていく。
最初は俺のことを避けていた紫だが、徐々に俺の存在を受け入れるようになった。
俺に笑顔を向けることはないが、話しかければ世間話はする。
それでいい。少しずつでも俺に慣れていけば。
紫を見ていると、昔うちの庭に迷い込んだ仔犬のことを思い出す。
それは、こげ茶色の毛並みの雑種だった。
ただ、目は綺麗なブルーで、見ていると引きつけられた。
メスの仔犬でガリガリに痩せていて、足を引きずっていた。ミルクをやっても、俺がいると絶対に飲まない。
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