極上御曹司の愛妻に永久指名されました

まず長谷川が小さく微笑して礼を言う。
彼のはエンジのネクタイだ。
そして、風間のが紺。
「気を使わなくて良かったのにな。でも、ありがとう」
私の目を見て風間が頬を緩める。
セレブのふたりにしてみれば些細なものかもしれないけれど、予想していたよりも喜んでもらえて嬉しい。
「今度うちの喫茶店のコーヒー飲みに来て。ご馳走するから」
うちは『真野珈琲店』というコーヒー専門店。場所は銀座にあって、創業昭和元年という古い歴史を持つ。
豆と焙煎、それと水にこだわり、オリジナルブレンドで一杯千円と値段は高いがすごく美味しい。
うちのファンという著名人が結構いるのだ。
「マイセンのカップでコーヒーが出てきて、美味しいの。お店の雰囲気も落ち着いていて、隠れ家的な場所だよ」
小春がニコニコしながら宣伝に協力する。
「それは是非とも行かないとな」と風間と長谷川は口を揃えて言った。
一時間半ほど車に乗っていると、見慣れた風景が見えて来てこの旅も終わるんだなって思った。