極上御曹司の愛妻に永久指名されました
「ほら。今日はゆっくり休めよ」
「うん、ありがとう。風間も」
ニコッと笑顔で礼を言うが、店の前に停まっている真っ赤なイタリア車を見て、顔が強張った。
この車……ひょっとして……。
「どうした?」
風間が私を見て怪訝な顔をする。
「う、ううん。なんでもない。ありがと。じゃあ」
咄嗟に笑顔を作って誤魔化すと、彼に向かって軽く手を上げ、家に帰る。
店の二階と三階が住居部分で、店の横にちょこんとあるのがうちの家のドア。
店からも出入り出来るけど、お客さんもいるし、なるべくこちらのドアを使っている。
バッグの中を漁るが、鍵が見当たらない。
あれ?
家出る時、スマホがないって大騒ぎして持って出るの忘れたのかな?
仕方なく店の方から入るが、奥のカウンター席にある男性が座っていて踵を返したくなった。
あの後ろ姿、やっぱりあの人来てたんだ。
「よお、お帰り」
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