極上御曹司の愛妻に永久指名されました
私の帰宅に気づいた父が笑顔で声をかける。
「た、ただいま」
顔を引きつらせながらそう返すと、カウンターに座ってた男性が私の方を振り返った。
「やあ、紫ちゃん、お帰り〜。卒業旅行楽しかった?」
ニコニコ……いや、ニヤニヤ顔で聞いてくるのは、黒沢冬馬。身長は百七十くらい。つり目で耳にダイヤのピアスをしている。
国内で五本の指に入る黒沢不動産の御曹司で私の姉の元彼。
私には三つ上の姉がいる。
名前は真野美桜。
美人だが、自由奔放でわがまま。
現在、家を出て一人暮らしをしている。
『玉の輿に乗る』が姉の口癖。金持ちの男と付き合うが、長続きしない。
この黒沢さんと恋人だったのも半年くらいで、すぐに飽きて別の男に乗り換えた。
だが、彼は足しげくうちの珈琲店に通い、姉の代わりに私に絡む。
私が金持ちを偏見の目で見てしまうのもこの人が原因だ。
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