極上御曹司の愛妻に永久指名されました
「社長が最近体調悪いし、恭一くん安心させたいんじゃないかと思うんだ。許してあげてよ」
事情はわからなくもないけど、式の日取りなんか決めたら、後で恋人ではないんだって言えない状況になるじゃないのよ。
「社長に嘘を付くのは気が重いの。それに、すぐにバレるよ」
風間と違って社長はふっくら体型で、温和な性格。
社員にも気さくに話しかける社長を騙すのは辛い。
黒沢さんに嘘をつくのとは訳が違う。
「まあ、恭一くんが悪いようにしないって。紫、帰るなら、タクシー呼ぶから待って」
きっと風間にタクシーで帰らせるように言われたのだろう。
でも、黒沢さんのことは私の問題だ。
「必要ないよ。会社のお金も風間のお金も使いたくない」
帰る時くらい、風間の支配から抜け出したい。
ムスッとした態度で言って、PCの電源を落とすと、荷物を持って秘書室を後にする。
「ちょっと、待って、紫。ひとりで帰ると危ないんじゃない?」
小春が追って来たが、立ち止まらずに彼女を振り切った。
「平気よ。勤務先だって変えたんだし」
ひとりになるとポツリと呟く。
風間だけじゃなく、小春にも腹を立てていた。
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