元カノと復縁する方法
「え!?別れた?」

外出が同じタイミングだったその機会を逃すまいと、俺は同じチームのメンバー、水瀬蓮(みなせ れん)をランチに誘った。
蓮は3年前に中途採用で入社してきた30歳。俺や旭の一つ上に当たる。柔らかい人柄ですぐに職場に馴染む器用さと、年下のメンバーにも決して偉そぶらない態度で、すぐに打ち解けた。
社歴は俺の方が長いが、チームの兄的存在で、旭とも相談の上、半年ほど前に蓮には付き合っていることを打ち明けていた。

「お前、・・いいの?」

二言目に出されたその言葉に、眉を寄せる。
真顔で見てくるその視線に耐えきれず、目を逸らし、定食のサバの身を外す。
この定食屋は、この辺りのビルに入っているビジネスマン御用達だ。年配の夫婦が営んでいる店で、定食の価格は東京では破格の700円。おかずにご飯と味噌汁、漬物と、小鉢が一つ、ついてくる。蓮も俺も、昼食にはここを利用することが多い。

「良くは、ない。」

蓮の前では、いつも安心して正直な気持ちが出せるような気がする。
言葉に出してみて思った。そう。良くは、ない。

「まー、二人の事だし、俺が口出しすることじゃないけどなぁ」

蓮は俺の答えに少し呆れたような顔をしながら、頼んだ生姜焼き定食を美味そうに食べている。

「まだ、俺も気持ちが整理できてないんだよ・・」

そう答えた俺に、真面目なお前らしいけど、と言ってから、箸を動かす手を止めて、ぼそっと落とした。

「動くとしたら、橘と、主任かな。」

それを聞いて、同じくピタリと手が止まる。
何が、とは聞かなくても、分かった。そう、旭がフリーだと分かれば、もう遠慮する必要はなくなる。そうなれば、動く奴らが出てくる。

分かってる、と小さく言って、颯は箸を持っていない手を額に置いた。
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