元カノと復縁する方法
このメンバーは酒が強い。

ビールの杯を次々と重ね、いい感じに酒が回ってくる。
仕事の愚痴も程々に、橘が酔った勢いに任せて旭に尋ねた。

「旭さんって、彼氏さんと順調なんですかー?」

呼び方もいつの間にか、旭、だ。

おい。名前で呼ぶな。名字で呼べ。心の中で突っ込む。

んー、と反応する旭も、ふわふわと酔っているようだ。

「んーん。別れたんだー。」

「え」

そう短く返した目が、鋭く光った。ように俺には見えた。

じゃぁ今フリーですか!?更に絡む橘へのあしらい方も、日中に比べると弱い。蓮が、ほら、酔いすぎだよ、と優しく声をかけ橘を止める。ありがたい、と思った。

その後も橘は旭さん、旭さん、となにかにつけ嬉しそうにじゃれついている(ように見える)。イラ、イラ、と怒りが蓄積されてきたところで、我慢できず、足を伸ばして旭の膝にコン、と触れた。

反応は無い。

焦れったくなり、そのまま足首を触れ合わせる。逃げる気配がないことにいい気になり、すり、と動かしたところで、旭が声を出した。

「木曜日だし、そろそろお開きにしません?」

テーブルの下のやり取りなど感じさせない笑顔。

「はい!今日は、俺が旭さん送っていきます!」

即座に手を上げる橘に舌打ちが出そうになる。

「いや、お前路線違うだろ。俺が・・」

「えー!そう言っていつも瀬戸口さんじゃないですか!ずるいです!」

お前じゃ送り狼になるだろ、と口には出さずに言い、更に言葉を返そうとしたところで、声を出したのは旭だった。

「じゃぁ、橘くんに、お願いしようかな。」

その瞬間、怒りと嫉妬を混ぜた感情が爆発しそうに駆け巡る。

こんなこと、無かった。
俺が一緒にいるのに、他の奴と帰るなんて、付き合う前ですら。

会計を済ませ、呆然と立ち二人を見送る俺の肩に、蓮はぽん、と手を置いた。
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