元カノと復縁する方法
「ふーん。営業部内で、再び旭争奪戦が始まりそうだね。」

こちらの気も知らず、千夏はニヤニヤとしている。
千夏は、颯と付き合っていたことを知っている。その前の、私の秘めた気持ちも。
付き合う経緯を伝えた時には、「あんの腹黒男!やりやがった・・!」と上を向いて唸っていた。

旭が幸せなら、と応援してくれていたが、元々、涼しい顔をして仕事もプライベートも成果を出す颯を、千夏は好きではないようだ。今回の件も、話を聞くうちにみるみる顔が般若みたいになっていった。居酒屋で「あいつ連れてこい!土下座させろ!」と怒る千夏を抑えつけた事を思い出し苦笑する。

「で、旭は、どうしたいの。」

頬杖をついてこちらを見る千夏に、情けない顔をして答える。

「まだ、全然、まとまってない。やっぱりまだ、好きだし、別れたこと、後悔もしてる。」

「でも、もう一度寄りを戻してほしいって言ったところで、何も変わらないのも、分かってる。」

そうだよねー。と千夏は伸びをするように椅子に身体をもたせ掛ける。

黒髪のショートが似合う千夏こそ、私はクールビューティーだと思う。入社時に長かった髪は、邪魔だと言って早々に切ってしまった。
彼氏がいたり、いなかったり。あまり長続きはしていないが、男を切らさない。感情を会社でも家でも変わらず出すので社内では敬遠する男性陣が多いが、本当の姿は千夏も私も変わらないと思う。

争奪戦、か。

自分をいいと思ってくれている人がいるのは、知ってる。誘いを受けたことだってある。でも、その中で一体何人が、一緒に暮らして、それでも好きだと言ってくれるだろうか。

改めて千夏を見る。自分のことのように考え、怒ってくれる。本当に良い友達だと思う。

「私は、一回旭に他の人、見て欲しいな。あいつがみっともなく焦るとこ、見たいもん。」

前言撤回。

「面白がらないでよ!」

吹き出してそう言った時、上から声をかけられた。
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