元カノと復縁する方法
「榛名、旭さん、ね。」

その面談は、千夏とのランチの翌々日に行われた。香月は、桐山の5つ上の37歳。
隙の無い美しさだ、と旭は思った。頭のてっぺんからつま先まで、気を抜いていない。くるん、と跳ねている自分の毛先をちらりと見た。

「これまでは、営業サポートに特化、か。営業は新卒で3年間してたのよね。」

「はい。」

「今後は、どう考えてる?」

ぽんぽんと飛んでくる質問に、緊張しながら答える。

「自分には、人のサポートは合ってると思ってます。なので、この道でスペシャリストとして・・」

「榛名さん。」

「はい!」

旭が言い終わる前に言葉が被せられる。揃えられていた足が、右足を上にして組まれた。

「あなた、彼氏は?」

「い、いません。」

「結婚の予定は?」

「・・無いです。」

結婚、という言葉で、まだ治りきっていない傷が少しチクリとする。

そんな旭の様子に構うことなく、言葉は続く。

「もちろん、今後結婚するかもしれない、子どもが出来るかもしれない。でもその時は子どもを預けて働く時代でしょう。その為には、時短でも必要とされている能力を身に着けていかないといけない。」

評価は、高いけど、と言い、前期の査定だろうか、バインダーの向こうでペラリと紙がめくられる。

「チヤホヤされてる、なんて言われないくらいのキャリア、積まなきゃ駄目よ。」

「・・はい。」

「何か言いたいことがあれば、言う。」

びく、となる。

「わ、私は、自分がやっているサポート業務も、必要とされることだと「今後は」

「契約社員や、派遣社員に任せる予定って、会社の方針にも出てるわ。」

桐山くんは、甘いからね。
はぁ、と呆れたようなため息のあと、面談の終了を告げられた。
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