元カノと復縁する方法
嫌な予感は的中した。

「榛名さん、この提案書でこれまでやってきたの?」

「はい」

たた、と小走りで香月のそばへ向かう。
そんな旭には顔を向けず、香月は言った。

「皆はどう思うの?」

「俺は、旭さんの資料、見やすくて好きでーす!」

はーい、と手を上げて橘があえて明るい声を出す。

「他は?」

「問題ないと思いますよ。」

俺の声に、蓮も頷く。

はぁ。

本日何度目かのため息がつかれた。
だからチヤホヤされてるって言われるのよ、と小さく聞こえる。

「皆、これからは遠慮なんてしないで指摘して。他社とも比較される資料にこれは無いわ。商品の詳細データをここまで載せて。前年、一昨年のデータも。」

旭に説明しながら言う。

間違ってはいない。どうしても旭の表情を窺ってしまう自分を抑えて、思った。

このチームは、桐山、水瀬、橘、瀬戸口の全員が、もちろん資料を使いはするが、それよりもクライアントの担当者とのコミュニケーションで話をまとめてくるのが得意なメンバーだった。

確かに、旭の能力は偏ってしまう。

そうは思いながらも、颯は旭を心配そうに見つめていた。
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