元カノと復縁する方法
「おい、上がれるか?」

22時過ぎ。桐山が主任だったときには、ここまで残っていたことは繁忙期以外ほぼ無かった。
香月が帰り準備をする気配がして、残っていた颯は旭に声をかける。

「ごめん、もうちょっとあるから、気にしないで帰って。」

颯の顔を見て笑顔を見せるが、その顔は疲れ切っている。

「瀬戸口くん。あなたはもう帰りなさい。」

榛名さんは、明日フレックス使っていいから、今日中に私に資料、メールしておいて。そう言って立ち去るのを見送る。

姿が見えなくなったのを確認し、我慢出来ず、ぐい、と顔を近付けた。

「鍵くれたら、お前んちで飯、作っとくぞ。」

びっくりしたようにこちらを見る。頬が赤く染まるのを見て、心臓がぎゅぅ、となった。

「いいよ。大丈夫。」

そう言ってくれるだけで嬉しい。そう言ってまた資料に目を戻す。

弱ってる。

同期としては、旭に必要なことだと分かっているが、個人的には、見てられない。

終わるまで待とう。そう思ったところで、扉から香月が顔を覗かせた。

「集中させてあげなきゃだめよ、瀬戸口くん。」

降りるわよ。

はい、と返事をして、早く行って、と手をパタパタと振る旭に後ろ髪を引かれながら、オフィスを出た。
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