元カノと復縁する方法
桐山はそれから旭が帰る時間を逃さず聞いてくるようになった。遅い時間であれば、必ず送ると言う。課長に就任して多忙な桐山は、なかなか早く帰れる状況では無いようだ。 

『今日は?』

19時。携帯に届いた短いメッセージにため息をつく。
車で交わすキスは、日に日にタチが悪いものになっていっていた。

「ん・・はぁ、きり・・やまさんっ・・」

絡め取るようなキスは、すぐに私の身体の力を抜いてしまう。

上からくちゅ、くちゅ、と唇を挟み込まれるたびに、甘い息が漏れる。

キスの合間に盗み見た彼は、もう、上司だったときの穏やかさも柔らかさも無い。

「違う・・人みたい・・」

そう口に出してしまった私を見下ろす顔は、少し息が乱れ、何かに耐えるように目を細めている。

ぞくりとした。

「それは・・こっちのセリフだな。」

苦しいのかネクタイを緩め、もう一度顔を寄せてくる。
彼に近付く度に香る、微かな甘い匂いに、思考が溶けていった。
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