元カノと復縁する方法
異動。

もしかしたら、香月との折り合いを考えると、旭が異動した方がいいのかもしれない。
でも、俺はこのまま、受け身でいいんだろうか。

その考えが、次の日には、今一番会いたくない男にメールをさせていた。

「桐山さん。」

入って来た男に手を挙げる。その日は接待があると言う桐山の予定に合わせて、終わる時間に近くのバーに呼び出していた。

二人で酒を傾け、沈黙を破るように桐山が口を開いた。

「仕事?プライベート?」

「仕事のことです。」

余裕だね、と言って酒を口に含んだ。


「俺は、あなたを超えたい。」

ちら、と横目で俺を見る。

「公募で一番ハードな経験を詰めるのは、どこですか。」

桐山は、少し黙り、ふー、とため息をついた。

「中国、上海で、合弁会社立ち上げの話が出てる。」

そこのメンバー募集がかかる予定だ。

「間違いなく、経験にはなる。」

中国。
自分には経験の無い土地、環境。
でも、ここに来るまでに、日本以外の回答は覚悟していた。

黙って頷く颯に、桐山は続ける。

「締切は今月末。選考の開始まで2ヶ月だ。すぐに準備が必要だよ。」

面接や役員へのプレゼン、そして、中国語の習得試験もあるという。

「気持ちが決まったなら声をかけて。香月さんにも、君を推薦するよう言っておく。」

「分かりました。」

覚悟は、もう、決まっている。
それ以外何も言わない颯に、桐山が口を開いた。

「・・君は、」

「俺が、君を彼女と引き離そうとしているとは思わないのか。」

「思いませんよ。」

何故、と目が聞いてくる。

「あなたは、そんなことが出来る人じゃない。」

そうか。と酒を傾ける桐山が、躊躇ってから口を開いた。


「・・一つだけ。」

「彼女と、話し合ってから決めてくれ。」

これ以上、嫌われたくないからね。
そう自嘲気味に言った。
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