DRAGON の赤い宝石
7月10日
今日は奏の誕生日だ。
必死に奏に黙ってアルバイトをして、やっと貯めたお金で宝石店のドアをくぐる。

「いらっしゃい。」

羽奈は、愛らしい可愛らしい笑顔をみせた。白髪の紳士がスーツ姿で出向える。

   「こんにちは。」

「彼氏へのプレゼント探しているんです。
あの~余り高いのは
買え無いんですケド」

そう言うと硝子の端に凄く立派な
プラチナの指輪を見つけた。

「あの、これ
見せてもらっても
いいですか?」

羽奈がそう言うと店主は
「勿論ですよ。」
そう言いながら硝子ケースを開けて手にとって見せてくれた。

プラチナにギロリとした凄い立派な男らしい龍がど迫力で光っていた。

「カッコイイ奏に似合いそう。」

羽奈は、龍の指輪に一目惚れした。


「ハハハこれはね、不思議な指輪で、 サイズが、あげた人にピッタリになるんだよ。多分彼氏にも
ピッタリと思うよ。」

      「凄い!」
          

「でもね、これは番(つがひ)なんだよ。
 つまりペアリングだよ。
ほらコッチが女の子用はめて
みるかい。」

そう言うと店主は羽奈に
進めて来た。

羽奈は左手の薬指、中指何処に
でもピッタリハマった。
凄い。はめた途端欲しくて欲しくて堪らなくなった。

御願いします。これは私に売って
下さい。

「う~ん。
ただね、お嬢さん、ペアリング
だから2点お買い上げ
いただくんですよ。

ちょっと問題があってね~
この、彼氏のリング はね、
レプリカなんだよね。
これは “番“ なんだから
いっも一緒にないとダメなん だ。
だからレプリカが必要なんだよ。


 来年の12月25日、に本物が
入荷するんだ
 来年のクリスマスにとりにおいで。
 五万でいいよ。


この指輪が君を気に入ったみたい
だからね。
ほらルビーの目に力が入ってる
みたいだよ
生きてるみたいだろ?。」

「そう言われたら
そうかな?良くわかりません。」

ハハハ「正直だね、お嬢さん。
 彼氏にはレプリカと言わず
渡しなさい。
 本物が出て来たらレプリカの指輪は自然と消える仕組みなんだよ。

自然に入れ代わるんだ
 だから、
お代はこのメスの龍の
リング分 だけ 頂くよ、目玉は
小さいけど、ルビー本物だよ。

 来年おいでね!! 待たせるお詫びで 代金は彼氏の分は入らないからね。
 きっとおいでよ。」
羽奈は嬉しくなって声を上げて
返事をした。

「はいきっと来ます。」
その時レプリカの龍が笑った
様に見えた。

そうだ一年先の事を言うと鬼が
笑う。なんてことわざが
頭をよぎった!
もしかしてレプリカの龍は
そう思って、笑ったのかも知れない。

後になって思うとこの時の事は
うなずける。

そんな先の事は考えも及ばず
羽奈は大喜びで店を出て奏の
待つカフェまで急いだ。

そんな駆け出した羽奈を見送る
白髪の店主はメガネを外して
赤い目を凝らしながら

「男龍の指輪は
どの男の手におさまるのかな?」
フフフ気長に探しなさい羽奈‼
この男龍は自分で、決めた時に
しか出てこない、しかも
店に出たとしても買われる事は
ない。


そうあのレプリカは間違った男の
手に渡らないように
ワザとレプリカを渡していた。
本物の男龍の指輪は店の奥深い
所に眠っている。
いっ出てくるか分からない
男龍の意思がうごかないとね。

        
奏は、行きつけのカフェで珍しく
スーツ姿で大好きな卵サンドと
カプチーノを堪能しながら羽奈を
待っていた。

ふと顔を上げると向こうから
仕立てのいいスーツを着こなした
30歳くらいかな、イケメンが早足で俺を見据えたまま、つかつかと靴音を立ててやってきて
ドッカリと目の前の席に座った。


「ここの卵サンド
旨かったよな !!な‼ 」
ニヤリとして奏を見た。

彼はガブリと卵サンドを口に入れた。
««««あーっああああ»»»»
俺、俺の━━━━‼
奏はアングリと口を開けて
ア〰ア〰と叫ぶ。

「ケチるなよ、これから羽奈と
レストラン行くんだろ、
お前の経営する。」


俺はビックリして、

「何でわかんだよ。」
つつけんどんに奏は睨む様に言った。

とっさに彼は、真面目な顔になり
奏に体を寄せ黒くでかい目を
ひん剥いて奏を見据えて言った。

「奏、いいか‼よく聞け!!」
彼は落ち着いた声で言った

「俺は、大人になったお前だ。
未来から来た、俺も宝生奏
お前だ‼」

「(ꐦ°᷄д°᷅)ハァ
俺の卵サンド返してくれませんか?
俺がアンタ?そんな冗談
バカバカしい。」


「お前は過去で俺が未来の奏だ‼」

「∵ゞ(≧ε≦๑)ぶっ笑わせんな!
なーに言ってんすか?」
ありえないありえないと手を叩き
奏は笑い転げた。


しかし彼は神妙な顔をして
怒鳴る様に言った。
「頼み事はひとつだ‼
奏、頼む浮気はしないで
くれないか?

高校の頃を思い出せ‼
羽奈はチャンスは二度無いって
言ってたろう。」

「やめて下さいよー
浮気浮気って、俺浮気なんか
してないっすからね!
羽奈が大好きで大事なんですから‼」

「いや、お前は裏切るんだ‼
一回のつもりがヅルヅルと
羽奈を泣かせるんだよ‼
お前に逢えた事が、俺の一大チャンスなん だよ。
頼むこの生地獄から俺を救い出してくれ」

奏は信じられないと言う顔をして、

「またまたぁ、未来人とか言わ
ないで下さいよ。
あんたがオレ?誰が
信用しま す?」

「・・・」

奏はカプチーノを飲むと
笑った。

「いいか、お前は根っからの女好きなんだよ。
羽奈に隠し事なんて出来ないん
だからな、必ず
 バレるぞ!! 
そして、底無しの地獄に落ちる。
これがチャンスなんだよ。」

彼の必死の頼み事に、

「あなたが俺だと言う、証拠は?
有ります か?ただの虚言にしか
思えない。」

彼はポケットから引きちぎられた
ネックレスを出した。

それは去年奏が、羽奈への誕生日
プレゼントに送った物だった。
ブチッとひきちぎられて
見るも無惨な姿になっていた。

ピンクのクリスマスローズの
花は彼の指先でブラブラと
揺れていた。


「エエーッ、そ、そのネックレスは!!」

奏は、凄く驚いた。
疑う余地の無い証拠品、それは
かなりショックだった。
特注品の一点物‼
「う、嘘だ、嘘だろう。」


彼は黙って席をたち、
「奏、俺は未来の今日
 羽奈のパーティーに行ってきた。

 羽奈は白百合のように美しい、
そして向日葵のように愛らしい。
 しかも四人の子供達に囲まれて
とても幸せそうだった。

 しかし夫は俺じゃない。この苦
しみが分かるか?」

彼は残りのカプチーノを、ごくごく飲み干すと、
「まだ、お子ちゃまだな!」
と捨てぜりふを残して、席を立った。

彼はまっすぐエレベーターの方へ
歩き出し、外から入って来た
羽奈とハチ合わせした。


彼は立ち止まり・・・

羽奈も何かを感じたのか足を
止めた。
彼は、じーっと潤んだ目をして
羽奈の方へと歩き出した。
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