【短】碧くんしか見てないよ
──今日も雨が降っている。
昨日、梅雨入りしたらしい。
やだな、雨。碧くんを、見に行けない。
わたしほんとに、どうしちゃったんだろう。
これって…一目惚れ…ってやつ?
はじめての感覚だ。
碧くんは今隣の隣の隣のクラスでなにしてるんだろう。
友達と話してるのかな。はたまた課題をしてたりして。
碧くんと同じクラスの女の子がうらやましい。
来年、同じクラスになりたいな──
「──和華~、別のクラスの男子が呼んでるよ?」
「え?」
モモに横から話しかけられ、わたしは教室の出入り口に目をやった。
「あれってさ、サッカー部の人だよね、たしか。和華、ここ最近でこれで6人目じゃないの~?」
モモのからかってくる声なんて聞こえなかった。
心臓がどこかにいっちゃうんじゃないくらい、ジャンプした。
だって……出入り口に立っているのは、あの、碧くんだから──。
「碧くんが………わたしに、用……?」
思わず言葉に出た。
「あの人、碧くんっていうの?和華、知り合いだったの?」
「……っ」
席から立ち上がり、出入り口へと足をすすめた。
碧くんは“いきなりごめんね”というような顔をしている。