【短】碧くんしか見てないよ
「和華、今のシュート見た!?も~、青木(あおき)先輩かっこよすぎ!!」
隣で興奮しているモモ。
ここは校舎と校舎を繋ぐ3階の渡り廊下。
現在放課後にも関わらず、帰らないでどうしてこんなところにいるのかというと。
……サッカー部員の練習姿を観察しているのだ。
モモのお目当ては3年生の青木先輩。
委員会が一緒で青木先輩の存在を知り、ドストライクのかっこよさからファンになったという。
モモ調べによると、青木先輩は現在彼女はいないらしい。
お互い放課後予定のない日は、こうしてファンのように眺めているのだ。って言っても、わたしはモモに付き合ってるだけ。
「青木先輩がお茶飲んでる~!あのペットボトルになりたいよ~!!」
「…」
モモ、重症すぎ。
「あ、赤松先輩ヘディングシュートしたよ!すごいねー!」
なぜかわたしは赤松先輩目当てのように勝手にされてるし。
モモにはまだ内緒だけど、わたしが見ているのは──
「……あッ」
「?どしたの和華」
「いや…今顔面に当たったの、痛そうだなって」
「え?どの人?あー!あの背の低い人?」
「う、うん」
「たしかに痛そ~!鼻血出てない!?」
大丈夫かな…。心の中で心配する。
あ、よかった…笑ってる。大丈夫そう。
あ、マネージャーからティッシュ貰ってる、いいなあ…マネージャー。
また、心の中だけで羨ましがる。
わたしが見ているのは──あの、碧(みどり)くんなんだ。