【短】碧くんしか見てないよ
碧くん。
わたしはまだ、君のこと、名前とサッカー部ってことしか知らない。
隣の隣の隣のクラスの男子。
さっき言ったように、最初はモモの付き添いで見に来ているだけだった。
だけどここ最近は──気づいたら、碧くんを目で追ってる。
一番最初は、背の低い人がいるなあ、て思ってただけだった。
きっと、160センチくらいしかないと思う。
わたしは170センチあるから、正直すごく低く見える。
だけど、碧くんってすごいんだ。
3学年のなかで、一番サッカーがうまい。
青木先輩や赤松先輩にも全然負けてない。
そしてなにより、
だれよりも楽しそうにサッカーをしている。
他人のわたしにもそれが伝わるくらい。
だれよりも全力でボールを追うその姿に、わたしはいつしか釘付けになっていた。すごくかっこいいと思った。
そして今、気になる存在になっている……。
碧くんが仲間と笑い合っているけれど、ここからだと声が聞こえない。
どんな声してるんだろう。
仲良くなりたいな…。
碧くんをこっそり観察することが、わたしの最近の一番の楽しみなのである。