【短】碧くんしか見てないよ
ど、どうしよう。
今この中に、碧くんがいるはずなんだけど。
わたしは今保健室の前で行ったり来たりしてる。
ここまで来たはいいけど、中に入る勇気が出ない。
やばい、不審者みたいだ、自分。
──がらがらっ
「ッ!?」
突然、目の前の扉が開いた。
「あ、すみません。ウロウロしてる人影が見えたんで…」
──碧、くん、だ。
碧くんは扉をそのままにして、中へと戻っていった。
ドッドッドッドッ…
なに、これ。自分、緊張しすぎじゃない?どうしたの?
これまで人並み以上に、恋愛してきたじゃん、自分。いったいどうしたの?
と、とにかく、わたしもなかに入らないと。
碧くんは水道で土や血を洗い流したあとのようで、棚から消毒液やガーゼなどを探している。
って、わたし、おかしいよ。なに突っ立ってんの。なかに入ったはいいけど、なに突っ立ってんの。こんなんじゃ碧くんに変な人だと思われる…!
わたしはとりあえず近くのイスに腰かけた。