御影第一高校の昼休み
小山田哲平。

うちのクラスに在籍していた生徒だ。

成績は中の下、素行は良くもなく悪くもなく。

いわゆる『普通の生徒』なのだけど、彼もつい先日から行方がわからなくなっていた。

「いつからだったっけ?」

僕は卵焼きを箸で半分に切り、口の中に放り込む。

少し甘めの味付けのものが好みだと言ったら、大量に砂糖を投入したらしい。

あいつはもう…『少し』甘めだって言ったのに。

「えーと…あ、そうそう、予防接種のあった日だよ」

友人がカフェオレをずずずと啜った。

そういえばあの日は大騒ぎだったな。

ちょうど夕食時にテレビ見てたらニュース速報が入って、駅前のファミレスにトラックが突っ込んで重軽傷者多数だの、ビルの建設現場の鉄骨が崩落しただの。

挙句の果てにはスクラップ場で不審火があって、大火災になったらしい。

そんな日に小山田が行方不明になるもんだから、警察も疑って当然だ。

ともすれば犯人くらいに思ってるのかもしれない。

でもなぁ…。

平凡な小山田が、どうやって建設現場の崩落やらトラックの暴走やら引き起こすんだよ。

超能力者じゃあるまいし。

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