この声が聞こえるまで
不思議と悲しいとは思わなかった。

「それでは、行きましょうか。」

どこからとなく和室の襖が目の前に現れる。

襖には金で装飾された桜が所々に絵がかれており気品が漂う。

踏み込んだ先は教科書に描かれている時代で表すなら平安時代と言ったところだろうか。

寝殿造りのお屋敷に、庭では貴族の子供達が蹴鞠をして遊んでいた。

「その格好では何かと目立ちますし、着物を用意させますのであちらのお部屋で着替えてきてください。」

案内されるがまま部屋へと連れていかれた。

紫の着物に白い菖蒲の花が描かれており品の高さが感じられる。

「私が…こんな着物きていいの??」

他の時代の者がこのような、高貴な着物を身につけて良いのだろうか?
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