ハル色に染まるるを…
「ふぁ〜、よく寝た。」
大きなあくびと伸びをしながら、
こちらに近づいてくるその男性。
「え、マツ!?寝てたんですか?」
川島先生が怪訝そうに、男性へ声をかける。
「うん、今朝海外出張から帰ってきてさ。
時差ボケで眠くて眠くて。いま手待ちだから仮眠よ。
ユウトは挨拶まわり?」
川島先生のことをユウトと呼ぶ所を見ると
かなり親しい関係なのか。
なんにせよ明らかに
クライアントとの会話ではない。
「お知り合いなんですか?」
そう思い、恐る恐る川島先生に問うと、
マツと呼ばれた男性の方が答えた。
「すみません、不躾なもんで。
僕ら高校の同級生でしてね。」
ポリポリと頭をかき、ニコッと笑うその男性は
悪い人ではなさそうだ。
川島先生も、何度も頷いている。
「そうなんですよ。あ、マツ。
こちら、新しい担当の本間ゆい先生。」
川島先生がそう言って紹介してくれたので
ハッとして、自己紹介をする。
「あ、申し遅れました。
私、新しく担当させていただきます。
本間ゆいと申します。」
ぺこりと頭を下げて、私は挨拶をした。