ハル色に染まるるを…
「そうなんですよ。あ、マツ。
こちら、新しい担当の本間ゆい先生。」
マツに本間先生を紹介する。
僕と同じ 先生 だと 最後の単語だけ
強調し、共通点をアピールしたが
あまり効果はない。
「あ、申し遅れました。
私、新しく担当させていただきます。
本間ゆいと申します。」
ぺこっと頭を下げて挨拶する
本間先生は、やっぱりとても可愛かった。
「あ、じゃあ、せっかくなので。」
サッと手慣れた様子で名刺交換を始めるマツ。
「機械第二部 主任の松田璃走(マツダアキユキ)です。
いまは課長代理もしてます。
難しい名前だから、これが必須アイテムなんですよ。」
シャキーンと名刺を挟むマツは、
悔しいがキザでもかなり格好いい。
「素敵な漢字ですね!」
どこか嬉しそうな本間先生。
「嬉しいな。ありがとうございます。
読み難いけど僕も気に入ってるんですよ。」
「名前好きなのはいいですね♪」
笑い合う二人を見て、やっぱりマツは
女性に人気だなと諦めにも似た気持ちになった。
ーー帰りの車内。
本間先生からマツについて聞かれた。
やはりと思った。
マツは昔からモテるから。
でもあえて不思議そうに、答えた。
「え?マツですか?イイやつですよ、すごく。」
でも彼女は物足りなかったのか
さらに聞いてきた。
「そうですか。…と見せかけて、裏があるとかは?」
裏?
そんなことは思ったこともない。
とにかく彼は何を取っても完璧だった。
僕が勝てるのは勉強だけだった。
隠しても仕方ないので、素直に答える。
「いやいや。全然。面倒よくて、成績も良くて、
人気も、人望もある。おまけにスポーツ万能でね。
高校でも大学でもサッカー部のキャプテンでしたよ。」
「…そう、ですか。(私の勘違いかな…)」
安心したような、がっかりしたような
よく分からない本間さんの返答に
ちょっとモヤっとしてしまい
怪訝そうに、聞き返してしまった。
「マツが、どうかしたんですか?」
気持ちに気づかれたと思ったのか
本間先生が、突然慌てて始める。
必死に話題を変えようとしているのが分かった。
照れている本間先生もやっぱり可愛いなと思った。