ハル色に染まるるを…


『ええ。すみません…実は…
風邪を引いてしまって。
のどを痛めてしまったんです…
…お聞き苦しい声で、すみません。
聞き取りづらい…ですよね…お恥ずかしい。
今日の朝起きたら、こんな声で…
自分でもびっくりしたんですよ。
すみません、本当に。こんな声で…すみません。』

苦しそうにゆっくり喋る真鍋さん。
本当に辛そうだ。

でも、いつもより口数は多い。

「いえいえ、大変そうですね。
お大事になさってください。
あ、松田さんに資料お渡ししますので、
よろしくお願いします。」


『あ、はい。分かりました。
本間先生も、お風邪引かないように
気をつけてくださいね。
この風邪、本当にツライですよ…
聞くところによると今、この風邪が
流行ってるみたいで。熱も、
けっこう出ますし。頭痛もひどくて。』

…真鍋さんってこんなに
お喋りだったかな?

風邪引いて、弱ってると誰かに
聞いてもらいたくもなるか。


「ご丁寧にありがとうございます。
あ、真鍋さん。体調悪い所すみません。
少しだけ。頂いた資料なんですがこの…」


私が言いかけると、真鍋さんが
酷く咳き込み始めた。


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