ハル色に染まるるを…


「すぐ参りますので、お待ちください。
とのことです。」

私は、林田先生の伝言を伝えた。


「ありがとうございます。何から何まで。
あ、本間先生よかったらもう出掛けてください。
男二人で話しますよ。」

松田さんが冗談ぽく言う。
そろそろお昼になるので有り難い。

「すみません。こちらこそ
お気遣いいただいて。
お言葉に甘えて失礼します。」


よく気がつく人だなぁ。
私は感心した。

「はい。それじゃあ、また。
お気をつけて、本間先生。」


笑顔で見送ってくれる松田さんに
頭を下げ、私は応接室をあとにした。


…なにも。何も気付くことなく。

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