10日間彼氏
え?あ、このダブダブのトレーナーのことかな?
「あ、ごめん。変な格好して。恥ずかしいな」
不機嫌そうな彼は私の捲り上げている袖をのばす。
「これ、男ものだろ、なんで?」
「あ、今日は寝坊して適当に着て来ちゃって」
「それで、朝帰りして学校きたのか?」
「へ?あ、あのこれは兄のトレーナーで・・すけど」
アニメおたくの兄の、アニメのキャラのロゴ入りトレーナーに腹を立ててる?ってわけじゃないよね。
ん、今、青くん、朝帰りとかなんとか言ってた?
「ご、ごめん」
バツの悪そうな彼の瞳がゆらゆら揺れている。
パッと壁から両手を離し、私からも2メートルほど離れた彼は、少し顔が赤い。
「いや、高校生が、朝帰りは無いよな、さすがに。僕は、何を言ってんだろう」
何かピンときてしまった私は慌ててそれを彼に確かめたいと思った。
「青くん、あのもしたかしたら今、かんちが・・」
「じゃ、さよなら」
私の言葉をさえぎるように、照れたように言って、彼は生徒玄関を出て旧校舎のほうへ走って行ってしまった。