10日間彼氏
私の手を、さっきよりも強く握りながら彼は無情にも言葉を、つづける。

とても、苦しそうに眉根をよせながら。

「そ、そんなのバレないようにしたらいいんじゃ」

私の無責任な提案に、目を伏せて首を振る彼。

「違う。たとえ誰にも知られなくても僕はそんなのは嫌なんだ」

「でも、」

別れたくない。別れたくない。別れたくないのに。

「桃ちゃんの将来も傷つけたくないんだ、だけどもしも君が待っててくれるなら」

「いや、そんな話、聞きたくないよ」

「落ちついて。ちゃんと僕の話を聞いて」

「聞かない、結局は、うまく丸め込んで別れようとしてるだけでしょ、私よりあの人がいいんだ」

ドロドロの嫌な感情がこみあげてきて、声を荒げてしまう。

「あの人?」
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