10日間彼氏
無理矢理に口角を上げて笑顔をつくる。

「お互い、走って別れようよ。じゃあね、青くん、バイバイ」

彼が同意するのも待たずに私は手を振って家のほうに駆け出した。


サヨナラ


少しの間だけ。



ハアハアッ。

少し走って立ち止まってしまった。

振り返ってしまってから、すぐに後悔した。

彼が、こちらを向いたままで、ぼんやり立ちつくしていたから。

30メートルは離れていて、夜だから顔がはっきり見えないにもかかわらず、私には彼が泣いてるように思えてならなかった。

「走れー青くんー」

私は、また明るく叫んで大きく手を振った。

彼は頷いて、右手で顔を拭うような仕草をしてから、反対方向へようやく走りだした。

10日前に見た彼の後ろ姿とは、もう違う彼だった。

こうして、私達の濃密な10日間は終わりをつげた。






おまけへ続く
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