10日間彼氏
ベンチに横になっていた私が起き上がると、パサッと地面に服が落ちた。

真っ暗だと一瞬思ったのは、その服が私の顔を覆い隠していたからだ。

落ちてしまった、服を拾い上げた私は周りを見回して、誰もいないのを確かめてから、ギュッーとそれを抱きしめた。それは、濃紺色の男性物のブレザーだった。

幸福が体中に広がって目眩しそうなくらいだ。

そのブレザーが誰のものかなんて、私にはすぐに分かったから。

甘い甘い石鹸みたいないい香りがする。

やっぱり

青くんが、かけてくれたんだ。このブレザーは青くんのものだ、絶対に。

優しいな、青くん。

「あ、いけない」

ブレザーを強く抱きしめ過ぎたら、皺になってしまう。

大事に、大事にしなくちゃね。

と思いつつも、またもそのブレザーにスリスリ顔をつけてキュンとしてしまう。
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