お酒はハタチになってから
私の言葉を聞いた彼が無言で身体ごと振り返り、その横顔がすっと息を吸うのが見えた。

「兄貴!この焼酎、やっぱ渚さん好みだって」

カウンターの中で彼の兄である店主がニコリと笑った。
テーブル客に料理を出し終えた店主の奥さんもニコニコと笑顔だ。
この夫婦の柔和な物腰に虜になる客も多いと思う。

「仕入れた時に、絶対気に入るだろうって言ってたから」

目の前で嬉しそうに言う彼は、お酒を飲んでいるわけでもないのに少し頬が赤い。
じっと凝視する視線に気付いたのか、彼は頬杖をついて誤魔化すように俯く。

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