Snow Doll ~離れていても君を~
「条件は、俺の女になること」
お、女……?
「簡単なことだよ。俺のそばでただ座っていればいい。
──人形のようにね」
「そんなの、無理です」
如月先輩のことは嫌いじゃないけど、急に女になれなんて言われても困る。
「優希奈さんにはいい話だと思うよ」
そばに立つ春馬君が爽やかに微笑みかけてきて。
私はまた暗示にかけられ、うっかり頷いてしまいそうになる。
「だって、今夜からは泊まる家がないんでしょう? 毎日、タダで友達の家に泊まるっていうわけにもいかないんじゃない?」
「それは、そうだけど……」
「じゃあ、決まりだな」
「えっ」
如月先輩が勝手に話を終わらせて、傍らに立つ男へ顔を向けた。
如月先輩の右手側──気だるそうに壁にもたれて腕を組む、青いシャツの人がゆっくりと顔を上げて──
私は、「あ」と声をもらしてしまった。
「海里、案内してやれ」
「──はい」
いつもの無表情な顔で、佐々木君が私の方へ歩き出す。
「俺も一緒に行っていい?」
春馬君が如月先輩へ許可を取り、私を部屋から連れ出してくれた。