Snow Doll ~離れていても君を~
薄暗い廊下を歩く佐々木君は、ずっと無言のままで。
私と春馬君は後ろをついていくだけ。
「ねぇ、佐々木君」
事情を説明してもらおうと、その背中へ声をかけると
「佐々木君て、どっちのこと?」
隣を歩く春馬君が首を傾げて訊いてきた。
「え?」
「俺も『佐々木君』だから」
そういえば、彼も佐々木春馬って名乗ってたような。
「俺達、従兄弟なんだよね」
「──あ。そうなんだ」
春馬君が誰かの雰囲気に似ている気がしたのは、佐々木君だったんだ。
「紛らわしいから、下の名前で呼んじゃいなよ。
優希奈さんから『海里君♪』って可愛い声で呼ばれたら、喜ぶと思うよ?」
「そ……そうかな」
恐ろしくて、呼ぶ勇気はないんですけど。
校舎の外はまだ雪が降っていたけれど、風が弱まってきていたので春馬君が傘を差してくれた。
佐々木……海里君は、髪の毛が雪に濡れるのも構わず、颯爽と歩いて行く。