Snow Doll ~離れていても君を~
Ⅶ 理由─本気で好きな女
今日は早朝から雪が降っていた。
教室での海里を、以前よりももっと気になり始めたのは、彼に抱きしめられた日からで。
気がつけば目で追っていて、誰かにそれを知られたら恥ずかしいからと、無理に視線を外したりしていた。
授業中は寝ているのかなと思いきや、意外と真面目に数学の先生の話を聞いてノートをとっている。
「じゃあ、佐々木。この問題、解いて」
20代後半で生徒に人気のある林先生に当てられた海里は、黒板にスラスラと数式を書いていく。
読みやすい整った文字だった。
「佐々木さぁ。やればできるんだから、その服装、何とかしろよ?」
「……はい」
海里は指定のシャツではなく、トレードマークのような青いシャツだったし、ネクタイも締めていないので先生に目をつけられていた。
彼が席に戻るとき、目が合ってしまい慌てて下を向く。
私と海里は、教室ではほとんど他人だった。
休み時間。
海里は明らかに校則違反で派手な服装をした4、5人と一緒にいて、何か深刻な話をしている。
休み時間だというのに、彼のグループだけ全然笑顔がない。
時折、こちらへ視線を感じるのは気のせいだろうか。
そんなとき、隣のクラスの子が二人顔を出し、海里の名前を呼んだ。
「佐々木君。ちょっと話があるんだよね。来てくれる?」