Snow Doll ~離れていても君を~
中庭を挟んだ向こうの校舎に3人はいた。
音楽室へ繋がる廊下は静かで、他に人はいない様子。
遠くの曲がり角から、絵瑠ちゃんと私はこっそり覗き見をする。
野次馬は私達だけではなく、海里の友人も集まってきていた。
赤茶色の髪をした小野寺君や、ピアスを両耳にいくつもつけた短髪の椎名君が、私に気づいて声をかけてくる。
「あれ。姫じゃん」
「姫も見物?」
「うん。ちょっとね」
「海里は姫以外の女子とあんまり話さないから、レアだよな」
私を姫と呼ぶということは、予想どおり如月先輩と同じチームなのだと思う。
海里と向かい合う女の子は一人。
もう一人の子は付き添いのようで、少し離れた所で見守っていた。
微かな話し声を聞くため、私達は瞬時に黙り込む。
「佐々木君は彼女、いるの?」
「……」
海里は何も答えない。
こちらに背を向けているので、表情は窺えなかった。
「バカ、答えてやれよ」
小野寺君が小声で突っ込む。