Snow Doll ~離れていても君を~
「私、ずっと前から佐々木君のこと好きだったの。もし彼女がいないなら……良かったら付き合ってください」
微かに震えている声。
自分のことじゃないのに、ドキドキと鼓動が止まらない。
「悪いけど、付き合えない」
潔いくらいきっぱりと、海里は断った。
「え……どう、して……? 友達からでもいいの」
「本気で好きな女がいるから、無理」
海里の前にいる女の子だけでなく、私達まで息を呑む。
「佐々木君、好きな人がいるんだ……」
意外そうに女の子がつぶやく。
私から見ても、すごく好きな人がいるようには見えない。
どちらかというと、いつもクールで女子に興味がないイメージだ。
“本気で好き”だなんて熱い思いが、彼のどこに隠されているんだろう。
「そっか……、わかった。ごめんね、話を聞いてくれてありがとう」
目を伏せて泣きそうになった女の子は、付き添いの子と一緒に教室の方へ戻っていった。
「良かったね、優希奈。佐々木君が断って」
「うん……」
無意識にうなずいてしまい、ハッとする。
絵瑠ちゃんの顔を見ると、両手で口を押さえて笑いをこらえていた。
「やっぱり、私の勘は間違ってなかったかぁ」
「え、どういうこと?」