Snow Doll ~離れていても君を~
「で、海里の本気で好きな女って、だーれ?」
小野寺君が海里の肩に腕を回し、からかうような目つきをする。
「いや……、あれは、断る口実だから」
なぜかうっすら頬を染めて、海里が言い訳をした。
「はっきり断っておいた方が、向こうも次に行きやすいと思って」
「なんだ、口実かよ。期待して損した」
「じゃあ、何で断った? 彼女いないくせに勿体ないな」
椎名君が冷ややかな眼差しを海里に送った。
「別に……。彼女は今、必要ないし」
きつく眉を寄せて海里が言う。
せっかく勇気を出して気持ちを伝えてくれたのに、あまりにも冷たい態度で。何だかあの子が可哀相になった。
海里らしいといえば海里らしいけど。
彼らが立ち去ったあと、私はひっそりとつぶやいた。
「告白できるなんてすごいね。私は好きな人ができても伝える勇気がないよ」
「わかるよー。最近はSNSとかで告白する子が多いみたいだから、直接言えるのがすごい。でもさ、どっちにしても断られたらショックで立ち直れないよね」
さっき海里が言っていた、『彼女は必要ない』という台詞が頭の中を駆け回る。
海里は私のことを大切だと言ってくれたけど、妹みたいな存在なのかもしれない。
そう思うと切なくて、これ以上私が彼のことを好きになりませんように、と心の隅で願った。