Snow Doll ~離れていても君を~


次の日、海里は数学の先生に注意されたとおり、白シャツに藤色のネクタイを締めて登校していた。

見慣れない姿が新鮮で、何度も視線が吸い寄せられる。

注意されたのは初めてではないのに、どうして急に校則を守る気になったのだろう。




放課後は久しぶりに同好会の部屋に寄った。


人はあまりいなくて、奥の窓際で海里と如月先輩が向かい合いチェスをしている。

如月先輩は透明、海里は淡い水色のクリスタルの駒で対戦中。


海里は首元が苦しくなってきたのか、片手でタイを緩めた。

その仕草に見惚れていると、不意に彼がこちらを向いてくる。
見惚れていたことがバレないよう、慌てて私は言葉を探す。


「あ、海里。そのシャツも似合うね。すごく新鮮」

「……指定のシャツなんだから、似合うも何もないよな」


私から目をそらし、海里はチェスの駒を一つ進めた。

すると如月先輩が不敵に笑う。


「チェックメイトだ、海里。優希奈が来てから急に弱くなったな。集中できないのか?」

「っ、別にそういうわけでは」

「それに、いつの間に呼び捨てをする仲になったんだ? さすがに妬けるぞ」
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